Vibe Codingを「技術的負債」とみなす
概要:LLMから技術を「借入」して作ったものを理解せず放置すれば,次第に「収入」(作業)を得ても「利子」(プログラムの分からなさ)に埋もれて進捗が消えていくようになる
背景:Vibe Codingにおいて規模拡大がうまくいかない問題に対する考察
基本プロセス
1. 作りたいもののイメージを文章や図などやりやすい方法で表現する
2. LLMにイメージを伝えて動くプログラムを作成する(Vibe Coding,技術的負債)
3. プログラムを学び,人間の理解に基づく形にプログラムを修正する(学習,返済)
※理解している技術ならば,3の学習は省力化されてほぼ確認になり,LLMを高速タイピングツールのように利用可能になる
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技術的負債
「負債」のメタファー
借入したら事業をより早く前進させられるように,技術を前借りすればソフトウェアをより早く完成させられる(リスクを取れるなら,得られる経験・学習の観点においてリリースを早められる利点がある) 基本プロセス
1. 動作するプログラムを作成する(借入)
2. プログラムを動かしながら学習し,リファクタリング(理解してコードを整理)する(返済)
背景
アジャイル開発における初期リリースを説明するために発明された比喩的な概念
技術的負債という概念の生みの親は Ward Cunningham (ウォード・カニンガム)です。彼は 1992 年にオブジェクト指向プログラミングの国際カンファレンス OOPSLA '92 の Experience Report でコードの初回リリースを負債に例えました("Shipping first time code is like going into debt")。
Ward Cunningham はソフトウェアの世界に多くの貢献を果たしてきました。Wiki の発明者であり、XP と TDD の父 Kent Beck の師匠のような存在であり、建築の世界の「パタン・ランゲージ」を Kent Beck と共にソフトウェアに輸入した人であり、「アジャイルソフトウェア開発宣言」の著者の1人でもあります
概念メタファーの考え方に基づく説明
メタファー(比喩)が思考にどのような影響を与えるかについて興味を持つようになったのは、 George Lakoff と Mark Johnson による『Metaphors We Live By』(訳注: 邦訳は『レトリックと人生』)がきっかけです。その本から学んだのは、人間は自分の言語で使われているメタファーから類推して思考しているということです。
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2025/8/14 16:47